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アクセサリーOEMでオリジナルの刻印を入れる方法
オリジナルアクセサリーブランドを立ち上げたい、または既存ブランドの品質をさらに高めたいと考えている方にとって「刻印」は重要な工程です。
刻印は単なる文字入れではありません。お客様の手に渡る製品が本物であることの「証明」であり、ブランドの世界観を伝える「顔」でもあります。この工程を疎かにすると、ブランド全体の信頼性を損ねる可能性すらあります。
本記事では、アクセサリーOEMにおける「刻印」の基礎知識から失敗しないための具体的な依頼方法、最適なパートナー選びの基準、そして費用感までを解説。ぜひ参考にしてください。
アクセサリーOEMの基本(おさらい)
まず、言葉の定義を整理しておきましょう。
- OEM(OriginalEquipmentManufacturer)とは?
自社ブランド(あなた)の製品を、他社(製造工場)に委託して製造することです。基本的に、デザインや仕様は自社で決定します。 - ODM(OriginalDesignManufacturer)との違い
ODMは、デザインの開発から製造までを丸ごと製造側に委託する方式です。あなたのブランドロゴを、製造側がデザインした製品に乗せるイメージです。
今回のテーマである「オリジナルのロゴや素材名を刻印する」という行為は、自社の仕様を製品に反映させるためOEMの領域に含まれます。
OEMを利用するメリット
- 自社で高価な製造設備(キャスト機、研磨機、刻印機など)を持つ必要がない
- プロの職人による高品質な製品を製造できる
- 自社は企画、デザイン、マーケティングといったコア業務にリソースを集中できる
アクセサリーにおける「刻印」の3つの役割と種類
アクセサリーに入れる刻印には、大きく分けて3つの重要な役割があります。
- ブランディング(ブランドの証)
ブランドロゴ、ブランド名、シンボルマークを刻印します。これにより、製品が誰によって作られたかを示し、顧客の所有感を満たします。 - 品位証明(品質の保証)
製品の素材(純度)を示す刻印です。例:「SV925」「K18」「Pt950」など。これが、製品の資産価値と信頼性を担保します。 - デザインの一部
メッセージ(例:Amour)、イニシャル、シリアルナンバー、模様など、デザインそのものの一部として機能する刻印です。
【重要】主な刻印の方法とメリット・デメリット
OEMで使われる主な刻印方法は「レーザー刻印」と「打刻」の2種類です。どちらを選ぶかで、仕上がりの雰囲気とコストが大きく変わります。
| 比較項目 | レーザー刻印 | 打刻(だこく) |
|---|---|---|
| 仕組み | レーザー光で表面を焼く・削る | 「ポンチ」という金属の判子を叩く |
| 仕上がり | シャープで均一。細かい図もOK | 力強く、深さがある。温かみ |
| 初期費用 | 低い(データ調整費程度) | 高い(ポンチ金型代) |
| 単価 | 高め(1点ずつ加工するため) | 安い(一度ポンチを作れば早い) |
| 得意なこと | フォント自由、細かいロゴ、データ変更 | 同じ刻印の大量生産、深い刻印 |
| 苦手なこと | 深い彫り | 細かすぎるデザイン、データ変更 |
1.レーザー刻印
イラストレーターなどで作成したデジタルデータを元に、レーザー光で素材の表面を精密に加工する方法です。
- メリット:データさえあれば、フォントの指定や非常に細かいロゴマークも忠実に再現可能です。金型(版)が不要なため、初期費用が安い、またはデータセットアップ費用のみで済む場合が多いです。
- デメリット:1点ずつレーザーを照射するため、量産時の1点あたり工賃は打刻より高くなる傾向があります。「彫る」というより「焼いて印字する」に近い質感になることもあります。
2.打刻(だこく)
ブランドロゴや素材名を彫った「刻印ポンチ(こくいんポンチ)」と呼ばれる金属製のスタンプ(判子)を作り、それをハンマーやプレス機で製品に打ち付けて凹ませる、古くからある方法です。
- メリット:金属に圧力をかけて凹ませるため、深さがあり、力強くクラシックな風合いが出ます。一度ポンチを作ってしまえば、あとは「押すだけ」なので、大量生産(数100個〜)になれば1点あたりの工賃は非常に安価です。
- デメリット:最初に「ポンチ」を作るための金型代(版代)が数万円単位でかかります。また、ポンチで物理的に叩くため、細かすぎるデザインや細い線は潰れてしまう可能性があり、再現性に限界があります。
【実践】OEMで刻印を依頼する具体的な流れ(5ステップ)
実際にOEM先に刻印を依頼する際の流れを、注意点と共に解説します。
Step1:企画・デザインの確定
- 何を:ブランドロゴか、素材名(SV925など)か、その両方か。
- どこに:リングの内側、ペンダントの裏側、留め具のプレートなど、具体的な位置を決めます。
- 注意点:刻印するスペースのサイズ(例:リング内側の幅1.5mm、プレートの2mmx4mmの範囲内など)を正確に把握し、そのサイズでロゴが潰れないか確認します。
Step2:刻印データの準備
- レーザー刻印の場合:AdobeIllustrator(.ai)形式のベクターデータを求められるのが一般的です。フォント(文字)は必ずアウトライン化してください。
- 打刻の場合:同じく.aiデータや高解像度の白黒画像データを提出し、それを元にOEM先(または提携先)がポンチを製作します。
Step3:OEM先への依頼と見積もり
以下の点を明確に伝えて、見積もりを取ります。
- 伝えること:製品の図面、刻印するデザインデータ、刻印する位置、希望する刻印方法(レーザーor打刻)、発注予定数量(ロット)
- 確認すべき費用:
- 初期費用(版代):レーザーのデータセットアップ料、または打刻のポンチ金型製作費
- 作業工賃(単価):製品1点あたりにかかる刻印費用
Step4:サンプル(試作)の製作と確認
この工程が最も重要です。本生産の前に、必ず1点で良いのでサンプルを製作してもらい、実物を確認します。
- 刻印の位置はズレていないか?
- デザインや文字は潰れていないか?(特にロゴの細かい部分や、925の「9」など)
- 深さや濃さはイメージ通りか?
- スペルミスはないか?(例:SILVERがSLIVERになっていないか等)
Step5:本生産(量産)の開始
サンプルの品質に問題がないことを確認し、承認(検収)したら、本生産(量産)を正式に発注します。
刻印を依頼するOEM先の選び方|5つのチェックポイント
「どこに頼めばいいか」は最も悩む点です。刻印の品質でOEM先を選ぶ際は、以下の5点を確認しましょう。
Point1:刻印設備を「自社保有」しているか
OEM先がレーザー刻印機やプレス機を自社工場内に持っているか、それとも刻印だけ外部の業者に再委託(外注)しているかを確認します。
- 自社保有(内製):◎スピードが早く、コストが安く、細かい調整(位置、深さなど)が利きやすい。
- 外部委託(外注):△納期が延び、中間マージンでコストが上がり、品質管理の連携が難しくなる。
Point2:希望の刻印方法に対応しているか
「うちはレーザー専門です」「打刻のポンチ製作から量産まで得意です」など、工場によって強みは異なります。自社ブランドのテイスト(シャープなロゴか、クラシックな風合いか)に合わせて選びましょう。
Point3:最小ロット(MOQ)と費用のバランス
刻印作業自体に最小ロットが設定されている場合があります。特に打刻は、初期費用(ポンチ代)が高額なため、小ロット(30個程度)だと1点あたりのコストが非常に高くなります。
Point4:データ入稿の要件は明確か
「.aiデータのアウトライン化必須」「白黒2値のJPGでOK(ただしトレース料別途)」など、データ入稿のルールが明確な業者は、その後のやり取りもスムーズです。
Point5:過去の「刻印実績」を見せてもらえるか
その業者が過去に手掛けた製品(特に自社と近いテイストのもの)の刻印部分の写真やサンプルを見せてもらい、品質(潰れやズレがないか)を確認しましょう。
アクセサリー刻印の「よくある質問」と「失敗例」
Q1.刻印の費用は結局いくら?
A.ケースバイケースですが、以下が目安です。
- レーザー刻印:初期費用(データセットアップ料)¥2,000~¥5,000程度+工賃(1点あたり)¥100~¥500程度。
- 打刻(ポンチ製作):初期費用(ポンチ金型代)¥10,000~¥50,000程度+工賃(1点あたり)¥10~¥100程度。
ロットが少ない(50個以下)ならレーザーが、ロットが多い(数百個以上)なら打刻の方がトータルコストは安くなる傾向があります。
Q2.K18やSV925といった「素材刻印」は法律で必須ですか?
A.いいえ、日本の法律では、貴金属製品に品位(純度)の刻印を入れること自体は義務付けられていません。
ただし、これは「推奨されない」という意味で、実際には「商業的にほぼ必須」です。
刻印がない貴金属は、消費者がその価値を判断できず、信頼して購入することができません。
また、例えば「SV925」と刻印しておきながら純度が満たない場合は、景品表示法(不当表示)(※1)に抵触する可能性があります。
信頼性の高い証明として、日本の造幣局が公的な第三者として純度を検査し、合格した製品に打刻する「ホールマーク(品位証明記号)」(※2)という制度もあります。これは任意ですが、最高レベルの信頼の証となります。
(※K18やSV925といった一般的な刻印は、造幣局のホールマークとは異なります)
※1参照元:e-GOV法令検索|不当景品類及び不当表示防止法第五条(不当な表示の禁止)(https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134/20241001_505AC0000000029#Mp-Ch_2-Se_1-At_5)
※2参照元:独立行政法人造幣局公式HP(https://www.mint.go.jp/operations/exam/operations_certification-01.html)
Q3.デザインが細かすぎる場合、刻印はできますか?
A.打刻では潰れる可能性が非常に高いです。レーザー刻印を推奨されます。ただし、レーザーであっても、0.5mm以下の線や文字は、素材や表面の仕上げ(鏡面かマットか)によっては読み取れない場合があります。OEM先とデータを見ながら相談が必須です。
Q4.刻印を入れるタイミングはいつですか?
A.製品がほぼ完成し、「研磨(バフがけ)」を行う前のタイミングが一般的です。研磨の後に刻印(特にレーザー)を入れると、刻印の周囲だけ質感が変わってしまうことがあるためです。打刻の場合は、変形のリスクがあるため、さらに前の工程で(平らな板の状態で)行うこともあります。
【失敗例】
- 「サンプル確認を怠ったら、ロゴが潰れていた」
データ上では綺麗に見えても、実物の1mmのスペースに刻印すると、ロゴのRの部分が潰れてただの丸になっていた。→必ず実物サンプルで確認しましょう。 - 「リングの内側に入れたら、サイズ直しで刻印が消えた」
リングのサイズ直しは、一度リングを切断してロウ付け(溶接)します。その継ぎ目の位置に刻印があると、研磨する際に一緒に消えてしまいます。→サイズ直しを見越し、継ぎ目(真下)からズラした位置に刻印するのがセオリーです。
まとめ:刻印はブランドの顔。信頼できるOEMパートナーを見つけよう
アクセサリーOEMにおいて、刻印は単なる「文字入れ」ではなく、ブランドの信頼性と世界観を決定づける重要な工程です。
成功の鍵は、以下の4点に集約されます。
- 刻印方法(レーザー/打刻)の特性とコスト構造を理解する。
- OEM先が求める仕様の正確なデータ(.aiなど)を準備する。
- 刻印設備を自社保有し、実績豊富なOEM先を選ぶ。
- コストを惜しまず、必ず「サンプル」で仕上がりを実物確認する。
この記事を参考に、あなたのブランドイメージを完璧に再現してくれるOEMパートナーを見つけ、世界に一つのオリジナルアクセサリーを形にしてください。
- アクセサリーOEMの業者探しサイト:ACCEM
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- アクセサリーOEMにおけるデザイン共有とプロトタイプ作成の流れ
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![]() 引用元:スペース公式HP(https://space-japan.net)
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![]() 引用元:石友公式HP(https://www.ishitomo.co.jp/index.html)
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![]() 引用元:B L.S.公式HP(http://bls-bell.com/)
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